2017年春季低温工学・超電導学会 セッション報告

5月22日(月)
A会場

HTSマグネット 1A-a01-05 座長 田中 秀樹

1A-a01 水野(鉄道総研)、および1A-a02田中(鉄道総研)らは、浮上式鉄道用RE 系実機大コイルに対する加振時発熱と振動特性を報告した。温度35 K
で起磁力700 kAを励磁した状態で最大振動加速度を10 G(ねじり)、15 G(曲げ)を20分間加振した結果、温度上昇は1.3 K(ねじり)、0.6 K(曲げ)であった
が有意な電圧発生がなかったことを示した。採用樹脂の寿命や温度マージンについて質疑された。
1A-a03岩井(東芝)らは、長さ約1 kmのREBCO線材を用いたレーストラックコイルについて、ロール状冶具で線材を押し付けながらの巻線による寸法精度
向上、コイルIV特性の計算値との一致、ヒートサイクルにおける劣化なしを示した。
1A-a04淡路(東北大金研)、および1A-a05加藤(東北大)らは、Yoroi構造に関して、ダブルパンケーキコイル間に設置する補強構造に厚さ0.5 mmのSUS
円盤を用いた場合、この補強材が有効であること、最大電流360 A通電時のひずみは計算値と実測値では電極付近で誤差が大きいこと、電極付近ではフープ
応力が大きくなるが固定ボルト本数で抑制可能であることを示した。


遮蔽電流磁場 1A-p01-05 座長 淡路 智

遮蔽電流(磁化電流)は、高温超伝導を用いて精密磁場を発生する際に、磁場精度と安定性における深刻な問題として認識されている。本セッションでは、
REBa2Cu3Oy (REBCO、 REは希土類元素)コイルにおける遮蔽電流に関する5件の報告が行われた。以下にその詳細を示す。
1A-p01の講演で岡山大の植田らは、レイヤー巻きとパンケーキ巻きREBCOコイルの遮蔽電流の磁場に対する時間的安定度について、発表者らが提案している
3次元電磁場数値解析を用いて詳細な解析結果を示した。特に、最近提案されているREBCOテープを4分割した場合のフィラメント結合の影響について報告した。
結果として、磁場ドリフトの大きさはフィラメント間抵抗が小さいほどドリフトが小さくなるが、パンケーキコイルとレイヤーコイルでドリフトの様子が異なる
ことが分かった。巻線した線材内部の電流分布計算の結果、磁場侵入がテープ端部から起こっていることが原因と考えられる。
1A-p02の講演で早稲田大の武藤らは、多芯REBCO線材をもちいたパンケーキコイルにおける、フィラメント間抵抗が与える遮蔽電流への影響について、3次元
電磁場解析による計算結果を示した。2本に分割した幅4 mmのREBCOテープを仮定して計算した結果、フィラメント間抵抗が10-4Ωm以上の場合には、フィラメント
絶縁した場合と同等の効果があることが分かったと報告した。
1A-p03の講演で京大の李らは、1.5 T-MRIマグネットを想定し、その基板の磁性が磁場に与える影響について、軸対象モデルによって計算した結果を報告した。
想定は、AMSCが提供するNiW基板上のREBCOテープであり、NiWは弱い強磁性的振る舞いを示す。しかし、計算の結果、基板の磁性の影響はコイルの発生磁場の
0.04%以下であり、約7%と見積もられる遮蔽電流の影響の方が遙かに大いことが分かった。
1A-p04の講演で北大の宮尾らは、REBCOコイルの遮蔽電流磁場の簡易計算法について報告した。REBCOコイルの遮蔽電流の影響は、通常高度な数値解析を用いて
計算する必要がある。宮尾らは、遮蔽電流を運転電流に係数αをかけたものとし、さらに遮蔽電流が作る磁場をコイル上端と下端にそれぞれ流れる電流が作る
磁場と仮定して簡便に遮蔽電流磁場を計算する手法を提案した。提案した方法で得られた遮蔽電流磁場は有限要素法による結果と誤差20-30%程度で一致すると
報告した。
1A-p05の講演で京大の李らは、超伝導線材のE-J特性及び磁場掃引速度が遮蔽電流磁場に与える影響について電磁場解析によって調べた結果を報告した。コイル
は内径50 mm、 30ターンのパンケーキ20個積層したものを仮定した。その結果、早い掃引速度では誘起される電界が高くなること、E-J特性が
ブロード(すなわち低n値)の場合には同じ運転電流における電界が高くなること等により遮蔽電流の減衰が早くなる事を示した。これらの結果について
は、数値解析するまでもなく半定量的に計算できるが、数値解析よって確認できたとのことである。


NMR・接続 1A-p06-10 座長 横山 彰一

本セッションでは、NMR用高温超電導マグネットおよび高温超電導線材の接続に関し5件の発表があった。
1A-p06:前田(理研)らは次期NMR用1.3 GHz(30.5 T)マグネットについて設計検討をした内容について報告。高温超電導コイル部にはREBCOのみと
REBCO+Bi-2223のハイブリッドの2種類について設計した。また、次期マグネットでは永久電流型とし要求する接続抵抗が示された。
1A-p07:大木(住電)らは次期NMR用1.3 GHz(30.5 T)マグネットについて永久電流型で製作するために高温超電導の接続要素試験の結果を報告。
REBCO超電導面間にREBCO微結晶層を作成し加圧下での熱処理、酸素アニールにより超電導接続を得た。
1A-p08:柳澤(理研)らは次期NMR用1.3 GHz(30.5 T)マグネットについて試作した高温超電導の接続サンプルと小コイルを用いて磁場減衰から接続
抵抗を測定した結果、10 A,45 Aとも5x10-13 Ωの接続抵抗が得られた。この値は次期NMR用1.3 GHzマグネットの要求仕様を満足する値である。
1A-p09:金(室工大)らはREBCO線材の超電導接続法として溶融バルクによる接続CJMB法を開発し、製作条件の最適化によりこれまでの10倍以上の臨界
電流が得られ、接続抵抗も10-12Ω以下と実用的な値が得られた。
1A-p10:町(産総研)らはREBCO線材の超電導接続法として金や銀などの金属ナノペーストをREBCO超電導面への塗布し熱処理する手法を提案した。接続
抵抗は数nΩレベルであり熱処理温度により接続抵抗の値が変かすることが分かった。





5月22日(月)
B会場

Y系線材MOD法 1B-a01-05 座長 堀井 滋

1B-a01 中岡(産総研)らは、(Y,Gd)123系TFA-MOD線材におけるBZOナノ粒子のサイズ制御法として一回当たりの塗布膜厚(donce)に着目した。これまで
donce=170 nm程度であったが、本研究では170~20 nmまでのいくつかのdonceをもつが、超伝導層の膜厚はほぼ同程度の線材を作製した。donce =30 nm
のとき、BZO粒子サイズの低減効果が最も顕著となり、77 Kおよび65 KのJcの磁場角度依存性が最も緩やかになることを示した。
1B-a02 鈴木(九大)らは、講演1B-a01で示した試料のうち、donce =170 nm とdonce =30 nm をもつ2種類の(Y,Gd)123系TFA-MOD線材のJc-B-T特性を
比較した。BZOナノ粒子のサイズが小さいdonce=30 nm線材のJcは、どの測定温度領域でもdonce=170nm線材のそれよりも高いことを示した。
特に、77 K、低磁場では、donce =30nm線材のJcの磁場印加角度依存性にブロードなB //c極大が現れ、donce制御によるBZOナノ粒子サイズの
短縮化を通じた磁場中臨界電流特性の向上を示した。
1B-a03 岡田(東北大)らは、BHOナノ粒子を含む(Y,Gd)123系TFA-MOD線材の4.2~90 Kにおける強磁場中臨界電流特性について報告した。要素的
ピンニング力の磁場依存性から、73 K以下の温度領域ではランダムピンで整理できるが、77 K以上ではランダムピンとは異なるピンニングメカニズムを導入
する必要があることを示した。本講演では、BHOナノ粒子とコヒーレンス長の温度依存性の関係からピンニング機構の説明を試みた。
1B-a04 池田(青学大)らは、Y123系フッ素フリーMOD線材の製造時間の短縮を目的に、高Icを維持しつつ仮焼工程、本焼工程、酸素アニール
工程の最適化を進めた。仮焼工程でおよび本焼工程での保持時間は1分程度(従来:1~2時間)で、また、酸素アニール時間は30分(従来:12時間)
で十分であることを示した。結果的には、従来の半分程度の時間である15時間程度で全工程を含めることが可能となった。
1B-a05 元木(青学大)らは、Y123系フッ素フリーMOD薄膜の磁場中Jc向上を目的に、原料溶液に添加する酸(HCl、HBr)および不純物金属
(Zr,Sn,Hf)の効果を明らかにした。酸の添加によって、Y123膜に”2342”相が導入されるが、この酸と金属不純物の組み合わせとピン力Fpの関係を
明らかにした。40 K、4.8 Tでのピン力を指標とすると、HBrを酸として選択しHfあるいはSnの添加により3倍程度のFp向上を実現した。


MgB2バルク 1B-p01-03 座長 岡 徹雄

本セッションはMgB2超伝導体をバルクに合成する際の方法ならびにそのキャラクタライゼーションについて岩手大と東京農工大から計3件の発表があった。
1B-p01:高橋(岩手大)らは、Tiを添加したMgB2バルクを、in-situ法あるいはex-situ法とよぶ方法で合成し、その際の結晶成長とピン止め効果のふるまい
を調べてその結果を報告した。In-situ法でのTiドーピングは捕捉磁場性能を向上させたが、ex-situ法ではその効果は見られないことから、後者での粒成長
をその起因と推論づけた。
1B-p02:内藤(岩手大)らは、BとMgとの反応を稠密な組織制御が可能となるInfiltration法によってMgB2バルクの合成を試み、B母相へのMgの侵入と反応
過程について詳細な検討結果を報告した。その中でMgB2合成の中間生成物としてのMg MgB2B25の生成を示唆した。
1B-p03:佐野川(東京農工大)らは、大型のMgB2バルクを得る手段として、気相状態でMgをB母相に拡散させる新たに手法(MVT法)を提案した。その材料
特性を調査し、結晶間の接合性の向上に起因してJcが2倍になったことを報告した。
以上3件はいずれもMgB2バルクの新たな合成法開発の可能性とその実用性を暗示したものとなった。


Y系プロセス 1B-p04-10 座長 山田 穣

九工大、名大、京大、フジクラ、電中研から7件の発表があった。販売も盛んなY系線材状況で特に筆者の興味をひいた発表について記す。
1B-p04 九工大松本ら:IBAD-MgO基板平坦化を溶液塗布法で行う。購入ハステロイ基板の表面粗さ16 nmが、Y2O3溶液の塗布法で2nmまでになり、
IBAD-MgOを作製するのに十分だった。以前から同様な手法で平坦化、低コスト化する試みは世界で盛んであるが、まだ、長尺に成功していない。今後
に期待したい。
1B-p08 フジクラ藤田ら:フジクラでは、人工ピン入り線材作製を昨年より本格化させた。今回、EuBCO-BaHfO3線材の長尺、厚膜高Ic化を発表した。
成膜速度の違いA)5-6 nm/sec, B)20-30 nm/secなどを検討したが、最終的に高速のB条件で300 mの長尺化を行った。厚さ2.6ミクロンで、574 A/12 mm
幅のIc、均一性は2.6%の高品質のものが得られている。短尺試料では、30 K, 7 TのIcと膜厚の関係が検討され、厚さ2 μmまでは約5 MA/cm2の高Jc
を示し、その後も6 μm厚で3 MA/cm2, Icにして1750 A程度の高い値を示した。
その他の発表では、人工ピン界面組織の検討、高速成膜、磁場配向制御、Ba2SmNb2O6ピンの検討などの発表があった。




5月22日(月)
C会場

ITER 1C-a01-06 座長 柳 長門

「ITER」のセッションにおいて、以下の6件の発表があった。
1C-a01 小泉(QST):「ITER TFコイルの調達進捗」 ITERのトロイダル磁場(TF)コイルについては、全19個のうち日本が9個のコイル本体と9個のコイル容器
構造物を担当しており、製作が進められている。各TFコイルは7個のダブルパンケーキが積層された構造であり、9個のコイル全部で63個のダブルパンケーキ(DP)
が製作される予定である。2017年5月現在、すでに、約半分の30個が完成したとのことである。工程としては、巻線、熱処理、トランスファー、導体絶縁、DP含浸、
DP積層、巻線部絶縁、である。巻線については極めて厳しい寸法公差が要求され(10 mを超える外形に対して1~2 mm)、丸型のケーブルインコンジット(CIC)
導体を納めるラジアルプレート(RP)の精密加工等についても多くのR&Dが行われたが、実機製作も進行する中、熱処理による寸法変化の予測精度等も格段に向上
してきた結果、工程の短縮化にもつながっているとのこと。まさに、関係者の努力の賜物である。
1C-a02 櫻井(QST):「ITER TFコイル構造物 主構造体の製作進捗」 TFコイルの構造物は、溶接によって構成される複雑な巨大重量物(~200 ton)であるが、
こちらも大変厳しい寸法公差が要求される。溶接時の変形を最小限に抑える様々な工夫が導入され、特に、変形量をモニターしながら行う「バランス溶接」によって
格段の進展が見られたとのことは特筆に値する。現在、数機の主構造体が完成し、冷却配管の取り付けも行われている。
1C-a03 辺見(QST):「ITER TFコイル巻線の熱処理変形の評価」 上述のとおり、TFコイルには極めて厳しい寸法公差が求められる。中でも難しいのは、導体の
巻線を行った後に熱処理によってNb3Snを生成するため、これによって導体が伸びることを予測し、トランスファー後の最終寸法として規定値に収めてRPに入れ込む
ことである。特に、熱処理後には脆性材料であるNb3Snに0.1%以上のひずみを加えることができない。これについても多くの厳しいR&Dが行われた結果、最終的に、
導体長の誤差0.02%以下、曲げひずみ0.1%以下が達成されている。
1C-a04 梶谷(QST):「ITER TFコイルにおける常温下でのジョイント抵抗検査手法の開発」 TFコイルでは、ダブルパンケーキ間の導体で接続作業が行われる。
接続部の施工の可否については、従来、コイル全体の完成後(ITERの場合はトカマク装置全体の完成後を意味する)に冷却・励磁を行わないと接続抵抗の評価が
行えず、製作時の常温における検査において何らかの評価することは全く不可能とされてきた。発表者らは、この常識に挑戦し、今回、遂に、それを打ち破ることに
成功した。接続部の導体長手方向に多数の電圧タップを設け、それらの電位差から電流の染み込み長さを評価する手法であり、十分な精度とは言えないものの、接続
抵抗の規定値からの大幅な増大があるような場合にはそれを検出することが可能であることを示した。大型コイルの製作技術において、素晴らしい成果と言える。
1C-a05 今川(NIFS):「ITER-TF接続サンプル試験における電位分布の考察」 上記のTFコイル用導体接続部については、サンプル試験がNIFSにおいて行われてきて
いる。すでに5本のサンプルが試験され、いずれも、外部磁場2 T以上で接続抵抗3 nΩ以下という規定値を満たしていることが確認された。大型導体における微小
接続抵抗の評価は難しく、CIC導体の周りに多数の電圧タップが設けられ詳しい解析が行われている。試験では、測定された電圧が電流に対してオフセットリニアと
なる特性が見つかっており原因の解明が行われている。新しい解釈として、個々の線材の接続抵抗の違いから一部の線材にまず輸送電流が選択的に流れ、それらが
臨界電流密度まで達した後に、別の線材に電流が流れ込む描像が示された。今後、このモデルに基づいたさらに詳しい解析に期待が持てる。
1C-a06 諏訪(QST):「ITER CS導体におけるツイストピッチ変化が分流開始温度に与える影響」 以上の発表はTFコイルに関するものであったが、本発表は、中心
ソレノイド(CS)コイルに関するものである。CSコイルは全導体が日本の担当として製造され、コイル製作を行う米国に送られている。現在、約9割の導体製造を
完了したとのこと。CIC導体の製造過程では、撚線バンドルをステンレス製のジャケットに引き込むがその際に撚線の5次ツイストピッチが伸びる(最大で450 mmから
590 mmまで)。この変化によって導体の特性が変化することが懸念され、スイスのSULTAN装置を用いたサンプル導体試験で行われた。分流開始温度の測定が行われた
結果、ツイストピッチが伸びた導体でも6.5 K以上の仕様値を満たしていることが確認され、10,000回以上の繰り返し励磁でも健全性が確認された。これは、5次ピッチ
が変化しても1次から4次までに変化がなく、撚線の剛性に変化がないためであると解釈されている。


A15線材 1C-p01-05 座長 村上 幸伸

1C-p01 太刀川(物材機構):太刀川らは新たにCu-10 wt%Ga母材の内部拡散法Nb3Sn線材を作製し、これまでのCu-15 wt%Zn合金やCu-5 wt%Ge合金母材と
比較した。15Znに比べ加工硬化が著しいが線材化は可能で、Nb3Sn中のSn濃度が最も高く、またSQUID磁力計によるTc評価でも高い結果を示した。
1C-p02 伴野(物材機構):伴野らはCu-Zn母材の内部拡散法Nb3Snにおいて、Nb占積率やNbフィラメント径の異なる線材を作製し性能を比較。フィラメント
サブバンドル間のSn、Ti拡散経路を確保した断面構成で600 A/mm2@16 T、1400 A/mm2@12 TのマトリックスJcを報告した。
1C-p03 菱沼(核融合研):菱沼らはCu-Sn-Zn合金母材用いたNb3Sn極細多芯線を作製。Cu-12Sn-6Zn母材では、臨界電流のひずみ依存性が比較的緩やかで、
高ひずみ下では高Sn濃度母材よりも高い臨界電流密度が得られることを示した。
1C-p04 菊池(物材機構):菊池らはCu-18.5 mass%Sn-1.6 mass%Tiブロンズを用い線径0.3 mm、フィラメント径約5 μmの極細多芯線を作製。Ti濃度を調整
することで冷間加工を可能にした。600℃長時間熱処理では16Snブロンズ材より約10%高いnonCu Jcを報告した。
1C-p05 菊池(物材機構):菊池らはTa-Ni合金をフィラメント間母材としたNb3Al線材の諸特性を報告。Niを複合することで加工性が向上し、室温での
引張強度は純Nbの場合に比べて20%高い1 GPaが得られた。


回転機(1) 1C-p06-10 座長 岩熊 成卓

本セッションでは、1件の発表がキャンセルされ、4件の発表が行われた。
最初の1C-p06では、京都大学の研究グループより、市販の1.5kW-200V 3相 4極かご型誘導モータの銅導体をBi2223線材で置き換えた5 kW超伝導誘導同期
モータについて、GM冷凍機でケーシングごと73 Kまで伝導冷却して1800 rpmで40分間の連続運転に成功したことが報告された。
1C-p07では、東京大学の研究グループより、電機子にYBCO線材、回転界磁子にMgB2線材を用いた全超伝導回転機を想定し、ギャップにおけるガスの伝導、
対流による冷却についての数値解析結果が報告された。
1C-p09では、豊田高専の研究グループより、船舶用電動機を研究対象として、バルク超伝導体をロータの界磁子に適用し、これを超伝導電機子により着磁
する方法について、数値解析による検討結果が報告された。
最後に1C-p10では、東京大学、JAXAの研究グループより、超伝導磁気軸受け等、宇宙観測機器用の挑戦的開発項目が紹介された。




5月22日(月)
D会場

液体水素応用/解析 1D-a01-05 座長 大平 勝秀

「1D-a01:前川(神戸大)」神戸大練習船を用いて神戸大から関西空港沖まで往復の液体水素海上輸送実験結果が報告された。小型液体水素タンク内部
の液面、温度、圧力、船体揺動データを計測している。船体動揺が大きい場合はスロッシングの発生により温度、圧力上昇が大きくなることが示された。
液面計測結果は次回発表で予定されており、今後は詳細な温度分布計測を行って、熱流動現象を解明する予定である。
「1D-a02:寺岡(東大)」極低温走査型プローブ顕微鏡(SPM)の冷却にヘリウム循環方式を採用するための実験結果が報告された。長時間連続測定と性能
向上を目指して、SPM側の蒸発ヘリウムガスを帰還させ、移送管への輻射熱と伝導熱を低減する実験を行った。帰還ガス機能を持たない移送管より高性能で
ある結果が得られ、先行研究で実施した数値解析結果とも良く一致した。今後、実際の装置に近い蒸発量での実験を予定している。
「1D-a03:原田(新規超流動現象研究会)」低温工学・超電導学会の「新規超流動現象調査研究会」(2013年から3年間)のこれまでの研究経過、NPO法人
立ち上げ、実験室の現状報告があった。低温生成にはヘリウム冷凍機を使用せず、パルス管冷凍機を導入して設計・試作段階である。超流動研究の測定手段
である振動子測定系にこれまで開発した各種振動センサーと除震機構を用いることで研究成果が期待できる。


冷却・冷凍機 1D-p01-05 座長 池内 正充

1D-p01:猪股明彦(神戸大学・川崎重工)
内容:断熱真空槽内の構成要素となるSUS、GFRP、積層真空断熱材からの脱ガスの測定結果の報告
議論:GFRPからの脱ガス予防のためメッキを施したとの説明に対し、メッキによる熱伝導の増大の懸念が示すされた。これに対し、メッキ層は非常に薄く、
実験においても熱侵入に関し差異は無いとの回答があった。
1D-p02:松本宏一(金沢大)
内容:磁気冷凍機の効率向上のための、反磁場係数の小さい磁性体を用いた磁気エントロピー評価結果の報告
議論:反磁場効果の無い線状磁性体を磁場に平行に設置することが効果的であるとの報告に対し、熱交換流体の圧力損失上昇などにより効率低下が生じ
ないかとの質問があった。これについて、反磁場効果がなくなることで運転サイクルの高速化が図れたり、磁気エントロピーの増大もあり、能力向上の
メリットが多いとの回答があった。
1D-p03:宮崎佳樹(鉄道総研)
内容:3種類の磁気作業物質を組み合わせることで磁気冷凍機の効率向上を目指した実験の報告
議論:効率向上に関する知見を問われ、基礎研究段階であり小規模実験の段階であることから、今後は大型化も含め更なる研究が必要との認識が示された。
1D-p04:増山新二(大島商船高専)
内容:4KGM冷凍機の効率向上を目指した2段目蓄冷材の組み合わせ研究
議論:低温では作動流体であるHeが理想気体から離れることが能力に影響を与えるのではないかとの質問に対し。十分考慮したうえでの研究であるとの
説明があった。また圧縮機の交換を予定しており更なる効率向上が期待できるとのことであった。
1D-p05:朱紹偉(同済大)
内容:kW級パルス冷凍機の開発に向けたシミュレーション報告
議論:シュミレーション上では損失を考慮していないためCOPが16%前後と高い数値が示されたことに対し、今後の進展に対する期待がコメントとして出された。


沸騰・熱伝達 1D-p06-09 座長 仲井 浩孝

1D-p06: 松本(京大)は、流路の中心に置かれた円形発熱体に対する液体水素の強制対流下での熱流束を測定し、サブクール沸騰状態におけるDNB熱流束の
表示式を提示した。発熱体表面の温度測定方法や加熱率の時定数などについての質問があった。今後は発熱体の寸法を変えて表示式の有効性を確認する。
1D-p07: 大平(東北大・JAXA・スラッシュ水素研究所)は、水平に置かれた逆三角形管内を流れる液体窒素の沸騰二相流の圧力損失や熱伝達特性についての
実験を行い、常温流体の円管流に対する評価モデルを極低温流体に適用できるか評価した。液体窒素での結果が液体水素の場合と違いがありそうか、あるいは、
評価式の統一化などについての議論があった。
1D-p08: 武田(神戸大)は、水素を液化して船で輸送する場合に容器内の圧力上昇に伴う安全弁作動時の急減圧による沸騰現象を調べる予備実験として、加圧
した液体窒素の急減圧時の沸騰状態や圧力・温度変化について測定を行った。沸騰が起こらなかった条件、実際の輸送時に成層条件が実現できるかなどの質問
があった。
1D-p09: 高田(核融合研)は、ドイツの落下塔を利用して微小重力環境を約4.7秒間持続させ、超流動ヘリウム中の気泡の成長を可視化した。気泡成長モデル
の計算式は測定値よりも大きな値を示す。また、観測された気泡は真球度が高くヒーター中心と気泡中心がずれていることがわかった。気泡がヒーター線から
ずれる理由やサブクール度0の場合の熱伝達機構の変化、落下させなかった場合の沸騰状態の変化などについての議論があった。




5月22日(月)
P会場 ポスターセッションI

計測/基礎 1P-p01-02 座長 槙田 康博

1P-p01 佐保典英(クライオイン)ホール素子を、形状記憶合金とバネ(弾性チューブ)による駆動源と、ストッパーとの組合せで、280μm間隔ほど移動させ、その
磁場及び磁場変動測定値から磁気力係数を演算する計測器を提案されていた。電池駆動のコンパクトなもので、吸引事故防止に携帯しても良いのかもしれない。


HTS諸特性 1P-p03-07 座長 東川 甲平

本セッションでは、鉄系・Y系・MgB2などの材料・線材について、幅広い諸特性の報告が5件あった。
1P-p03:阿部(一関高専)らは、11系の鉄系超伝導材料の過剰鉄存在下におけるFeサイトの置換効果について報告した。過剰鉄は同材料の問題となっており、
Mn・Co・Niによる置換効果を調べたが、CoやNiではキャリア増加の傾向は見られたものの、いずれも超伝導特性を改善させるまでには至らなかった。
1P-p04:入江(熊大)らは、1次元ピンであるBaSnO3に加えて3次元ピンであるY2O3をハイブリッドに導入したYBCO膜を作製し、全磁界印加角度(@ 1 T, 77 K)
Jcを向上させることに成功した。
1P-p05:Vyatkin(SuperOx)らは、Bi-2223線材を用い、過電流通電を経た後の線材内電流分布について報告した。2種類の過電流を経た線材内の電流分布が互い
に大きく異なる様子を示した。
1P-p06:小川(新潟大)らは、Bi-2223線材とYBCO線材を用い、振幅を揃えた様々な形状の周期波形を通電した際の交流損失の測定結果について報告した。振幅が
同じであるにも関わらず、交流損失に波形依存性が見られた。波形によって時間変化率が異なり電界領域も異なるため、n値の影響を受けていると考えられる。
1P-p07:藤井(NIMS)らは、活性粉末を使用したex-situ法MgB2線材の最適加熱処理温度について報告した。粉砕処理と雰囲気の条件を様々に変化させ、確かに
活性が高いと思われる粉末を使用した際には、最適な熱処理温度が低下することを示した。



直流送電 1P-p08 座長 水野 克俊

1P-p08 イワノフ(中部大):石狩プロジェクトの高温超電導ケーブルの断熱配管の真空排気の特性についての報告。真空排気条件を変化させてアウトガスの
評価を行い、外気温によって3~4倍程度変化することを明らかにした。また、アウトガスの放出レベルから真空ポンプ停止時の圧力上昇を予測し、10-3 Paには
16時間後に、10-2 Paには8日で到達するとのことであった。


送電ケーブル(1) 1P-p10-12 座長 筑本 知子

1P-p10:赤堀(東大)らは路線、直流き電鉄道への超電導ケーブルの導入効果について、運転間隔、路線の形態(環状線か直線状か)、駅・変電所の数・
間隔を変化させて、電圧降下抑止、回生率向上、変電所負荷平滑化についてシミュレーションした結果を報告した。その結果、環状線より直線状の方が
超電導導入効果が大きいこと等が明らかになった。
1P-p11:方(東大)らは直流き電鉄道への超電導ケーブル導入条件に関して、熱的解析をおこなった結果について報告した。解析ではケーブル径を変化させ、
ポンプの最大吐出圧は0.5 MPaと1 MPaの二種類、熱侵入量は1 W/m(曲げ部では5 W/m)として、ケーブルの長手方向の温度変化を直線部(4.2 km長)と
曲がり部(800 m長)で計算した。計算に用いたケーブルモデルは中空構造で軸中心部に液体窒素のGo-flow、外側にIn-flowの構造であり、ケーブルの直径を
139 mm→200 mmに増やすと、長手方向での温度上昇は大幅に低減化、また1台のポンプで冷却できる距離が約4倍になることを報告した。
1P-p12:富田ら(鉄道総研)は超電導き電ケーブルの敷設に関して、クリートのあるなしでの冷却時の軸張力の違いを比較し、クリートありでは最大張力が
700 kgfに達するのに対し、クリートを外すことで200 kgfまで減少、さらに蛇行部を設けるなどの最適化により、張力をほぼ0の状態で冷却できることを報告した。


超電導応用 1P-p13-19 座長 野村 新一

超電導応用のセッションの発表分野は多岐にわたり7件の報告があった。
1P-p13はSMES応用を想定したMgB2ケーブルによるパンケーキコイルの開発に関する報告である。
1P-p14~1P-p16は磁気分離を応用した汚水処理に関する報告で,1P-p14と1P-p15は,微生物による汚水処理能力を利用した汚水処理技術に磁気分離を組み合わ
せることで汚水処理の効率化を検討した報告で,1P-p16は可搬型浄水システムの検討結果に関する報告である。
1P-p17と1P-p18は超電導ケーブルシステムの限流動作に関する検討で,1P-p18は鉄道の直流き電システムへの応用に関して検討されている。
1P-p19は高温超電導リニアスイッチトリラクタンスモータの推進力に関して解析を中心に検討した報告である。




5月23日(火)
A会場

MRIマグネットシステム 2A-a01-07 座長 和久田 毅

NEDOの「高温超電導実用化促進技術開発」の「高温超電導高安定磁場マグネットシステム開発」に関する一連の報告がなされた。
2A-a01:横山(三菱電機)はプロジェクト概要について報告した。先の経産省およびAMEDプロジェクト(H25~27)では1/3サイズの3 T磁石を開発し、磁場均一度
2 ppm、国産の超高安定電源開発により磁場変動0.1 ppm/h以下を実現しマウスのイメージングに成功している。本プロジェクトではさらに実用化に向けH28年か
ら3年間で1/2サイズのアクティブシールドを備えたHTS-MRIの開発を行いイメージング実証する。さらにシステムの小型、高磁場化実証するために後半では5 Tの
磁石を開発する。質疑応答では、5T磁石開発の意義について質問がなされたが、小型3 Tの全身MRIを実現するために必要な経験磁場、電磁力とするためとのこと
であった。また、HTS-MRIが市場に出るためには、現行の1.5 T磁石の大きさ、重量などそのままで3 Tとし、そのためにはHTS線材コストを1/10にする必要がある
と語った。
2A-a02:大屋(三菱電機)は1/2サイズの3Tコイルの設計・試作について報告した。先のプロジェクトではコイルの歩留まりが問題となっていたが、線材構成と
判定基準見直しで良品率95%に改善。コイルの作り方自体は変えておらず、線材の銅フォーミングを銅メッキに変更したことが利いているのではないかとのこと。
2A-a03:川嶋(京都大)は励磁電源を励消磁用の(大きな)電源と磁場保持用の微小電流制御電源を切り替えて使う構成とすることにより、オーバーシュートなし
でもイメージング可能な磁場安定度が得られることを示した。
2A-a04,a05:宮崎、津田(東北大)はオーバーシュート法による遮蔽電流磁場抑制に関する検討を詳細に行い、オーバーシュート量を逐次増加させる磁場変動抑制
手順を確立・提案した。




5月23日(火)
B会場

MgB2 2B-a01-06 座長 木内 勝

2B-a01: 熊倉ら(物財機構)は、内部Mg拡散法を用いて単芯及び7芯線材の銅被覆高安定度MgB2線材を作製し、その特性評価を行った。特にMg棒の隙間に充填する
Bの粒サイズが重要で、大きいサイズを用いるとフィラメントが乱れ、Fe層を突き破る。したがって、フィラメントの乱れを抑制するためには、小さいサイズの
Bを用いる必要があると報告した。
2B-a02: 児玉ら(日立)は、メカニカル・ミリング法及び内部マグネシウム拡散法を用いて銅鉄シース単身線材を作製し、その特性評価を行った。得られた単芯
線材はin-situ法線材に比べて緻密なMgB2相で、高磁界領域で優れたJc特性を示した。高Jc化のためには更なる作製プロセスの最適化が必要であると説明した。
2B-a03: 澤田ら(青学大)は、MgB2と結晶構造が似たMgB2C2に注目し、PICT法で1000°Cの熱処理し、純度は低いがMgB2C2の合成に成功した。更に、このMgB2C2
を炭素源にしてMgB2を作製すると、焼成条件を広く取っても良好なJc特性が得られることを示した。この結果からMgB2C2は、MgB2結晶成長を抑制する効果がある
と説明した。
2B-a04: 岩中ら(日立)は、40 μm厚のCuテープ上に10 μmのMgB2薄膜を作製し、膜質評価及び臨界電流特性を報告した。薄膜のMgB2結晶は広い面に対して垂直な
柱状のため、磁界を膜面に平行に加えた場合よりも、垂直の方がJcが高くなる。今回の薄膜でも同様な特性になった。ただし作製した薄膜の結晶性がまだ十分で
ないため、以前作製した500 μm厚のCu板上のMgB2薄膜に比べて低いJcとなった。Cuテープ上の高Jc化のために、作製の最適が必要と発表をまとめた。
2B-a05: 藤田ら(京大)は、液体水素浸漬冷却のMgB2多芯線材のクエンチ特性について調べた。30 K、0.75 Tの条件下では、常電導伝播速度は数cm/sのオーダーを
有し、この値は20 Kの伝導冷却で報告されている結果と同程度あることを示した。ただし、最小入熱量に関しては報告されている値よりも数倍大きく、さらに
他の温度では常電導伝播が観測されない等、更なる詳細な調査が必要と指摘した。
2B-a06: 井上ら(九大)は、X線マイクロCTを用いて、撚り線加工及び減面加工を行った30芯MgB2線材のフィラメントの乱れについて調べた。減面加工では、圧縮率
の高い部位で断続的にバリア材が破れ、フィラメントの結合が起こることを示した。また、減面加工を行っていない線材でも、曲げひずみが大きい外周付近の
フィラメントに集中的にバリア材の破れが生じることを示した。


Y系バルク着磁 2B-a07-11 座長 和泉 充

「2B-a07:藤代(岩手大)」REBaCuO超電導バルクへの金属リング嵌め補強バルク材について、着磁した際の応力の推定において、バルク材を有限長とし有限長の
コイルを用いて有限要素法を用いてシミュレーションを行った。無限長バルクとの比較や金属リングの補強効果についても報告があった。
「2B-a08:高橋(岩手大)」バルクに対し磁場中冷却を行い、その着磁過程においてバルクの破壊挙動を実験的に確認した。また、有限要素法を用いて電磁場-弾性
応力解析を行い、周方向の最大応力を伴う着磁過程における電磁応力を算出している。
「2B-a09:森田(新日鐵住金)」バルク材について、従来の外周リング補強に加え、金属板と積層による複合材料化と内周リング補強とからなる新しい補強方法を
開発し、強磁場着磁が可能なリング状QMGバルクマグネットを作製した。この補強法で作製したQMGバルクマグネットにおいて、リング内周近傍の印可磁場に対する
最大ひずみ変化量は印可磁場の二乗に比例することがわかった。
「2B-a10:横山L(足利工大)」超伝導バルク体のパルス着磁において試料の一部に細孔を加工して磁気シールドの弱い部分を作り、そこから発熱を抑制しつつ着磁
特性を評価している。着磁中のバルク体表面の温度変化を測定し、細孔が着磁特性に及ぼす影響を調べている。
「2B-a11:下屋敷(岩手大)」バルクに対して印加磁場の立ち上がり時間を変化させたパルス磁場を印加し、立ち上がり時間の増加によって、低印加磁場ではバルク
外縁の捕捉磁場が増加し、高印加磁場ではバルクの総磁束量の増加が見られた。
パルス着磁では、印加磁場の立ち上がり時間を変化させるのみならず本格的な波形制御による捕捉磁場向上が報告されており、今後の可能性を期待したい。




5月23日(火)
C会場

SuperKEKB 2C-a01-06 座長 岩本 晃史

SuperKEKBビーム最終収束用超伝導電磁石システム(7-1)~(7-6)の連番で6件の発表があった。
「2C-a01:大内(KEK)」SuperKEKB最終収束超伝導電磁石システム(QCS)の概要の説明から建設の状況までの全体像が報告された。
「2C-a02:有本(KEK)」加速器リング中心から見て左側のQCS-Lについて4台のコイルが一体となった状態でハーモニックコイルによる磁場測定結果が報告された。
設計値からのずれを1%以下に抑えることに成功している。この値は補正コイルなどによる補正が可能な範囲である。
「2C-a03:王(KEK)」磁場補正用の超伝導ソレノイドのうち蓄積エネルギーが最大となるESR1の保護設計とクエンチ試験の結果が報告された。保護抵抗と低温
ダイオードを使用する保護設計となっており、保護抵抗のみの場合と比較してクエンチ時のコイル温度の上昇を低く抑える(200 K未満)ことに成功している。
「2C-a04:川井(KEK)」右側のQCS-R用冷却システム設計と建設状況が報告された。 TRISTAN実験終了後の1996年以降約20年間保管されていた250 W @4.4 Kの
冷凍機が移設され使用されている。5月から始まった冷却試験の結果がQCS-L用冷却システムの冷却曲線と比較して示され、冷却速度や最低到達温度の違いなどが
説明された。今後も性能確認試験が継続される。
「2C-a05:宗(KEK)」QCS-Lクライオスタットの熱設計とその冷却試験結果が報告された。システムは0.16 MPa、 4.4Kの過冷却液体ヘリウムにより冷却され、
飽和温度までの顕熱を利用した単相流冷却となっている。試験の結果は熱設計値とよく一致しており、 安定した単相流冷却が可能であることが確認された。
「2C-a06:青木(KEK)」QCSとBELLE II用冷凍システムのリモートモニタリングシステムの開発状況が報告された。これまでのデータ収集速度は制限されたデータ
点数にもかかわらず10秒周期であったが、ソフトウェアなどの改良により現在はシステム全点(974点)を1秒周期で収集可能になっている。 また、超伝導電磁石と
ヘリウム冷凍機の状態をネットワーク経由でモニター可能なシステムとして構築されている。


加速器 2C-a07-11 座長 村上 陽之

2C-a07:菅野(KEK):LHC高輝度化に向けた試作コイルのトレーニング特性について報告があった。0.8 mmのシムを追加し予備応力を大きくすることで機械的
支持を改善し、合格条件を満たすトレーニング特性が得られた。実機でシムを用いた場合、磁場精度が悪くなるのではないかとコメントがあり、実機の支持
方法に関する議論が展開されたが明確な結論には至らなかった。
2C-a08:榎本(KEK):LHC高輝度化に向けた試作コイルの磁場測定結果について報告があった。鉄の飽和が生じる高電流域で多極成分が磁場計算結果と測定値で
大きく異なった。今後、不一致の原因について究明する。
2C-a09:鈴木(KEK):LHC高輝度化に向けたコイルのクエンチ保護方法について報告があった。ヒーターを焚くことでコイル全体を常電導転移させコイル保護
する方法を用いる。試作コイルで本保護方法の試験を行い、ヒーター配置を改善することで保護ができる見通しを得た。ヒーター入力の遅れ時間に関する
質問に対して、ヒーター入力の遅れ時間は十分短く保護システムに大きな影響を与えることはないとの回答であった。
2C-a10:高山(東芝):加速器のビーム試験用のRE系コイルの試作について報告があった。重粒子(C6+)の実ビーム試験を想定し、十分偏向可能な寸法・磁場の
コイルを設計し試作を行った。クエンチ検出方法に関する質問に対し、50-100 mV程度で検出すれば問題なく、電圧で実施できるとの回答であった。
2C-a11:高山(東芝):重粒子線がん治療用回転ガントリーの励磁試験結果について報告があった。ビーム制御の観点から5種10台の超伝導磁石を用いており、
冷却は34台のGM冷凍機を用いている。治療照射を模擬した励磁試験を実施し、問題なく運転できる事を確認した。冷凍機の圧縮機が可動部に搭載されている
かとの質問に対し、圧縮機は可動部の外に固定されており、フレキで接続されているとの回答であった。




5月23日(火)
D会場

センサ・SQUID 2D-a01-07 座長 吉川 信行

本セッションでは7件の発表があった。
「2D-a01: 竹内(岡大)」では、赤外線レーザとHTS SQUIDを組み合わせた生体内磁気ナノ微粒子の位置同定システムが提案された。レーザで磁気微粒子の
温度を上げて磁気特性を変化させ、その変化をSQUIDで検出するものである。実験により原理実証が行われ今後の感度向上に対する見通しが示された。
「2D-a02: 平田(岡大)」では、磁気センサの前面に超伝導スリットを配置し、磁束フォーカス効果により磁気センサの感度向上を試みた。磁気センサ自体の
感度は低温で低下するものの、磁気フォーカス効果による感度向上が得られている。
「2D-a03: 増谷(近大)」では、金属管の非破壊検査を目的として、金属管を伝搬する音波のSQUIDによる検出が行われた。実験により金属管の端部や欠陥に
対応した反射信号が得られることが示された。
「2D-a04: 廿日出(近大)」では、ドローンを用いた磁気探査を目的として、フラックスゲートをドローンに搭載したシステムの開発が行われた。実験により
地面に配置された磁石の磁気分布を測定し、位置測定精度の評価を行なった。
「2D-a05: 林(JAXA)」では、STEMとEDSを組み合わせた分析システムのX線検出部にTESを搭載したシステムの開発が行われた。計数率向上のためにはTES
のアレイ化が行われ、実装技術の向上により10素子アレイの動作実証に成功した。
「2D-a06: 岡部(埼玉大)」では、SFQ回路とSQUIDを組み合わせたディジタルSQUIDの磁束感度を向上させることを目的として、2重フィードバックループ(FLL)
をSFQ回路で構成したシステムを検討した。SFQ-FLLの設計を行い、シミュレーションにより目標とした性能を得ることができた。
「2D-a07: 田中(名古屋大)」では、超伝導回路からの微小出力を高速に増幅することを目的としてナノ構造熱援用デバイスを作成し、その電圧電流特性を評価
した。入力から200 μAの電流を印加することで0.2 V程度の電圧出力が得られることを示した。



低温デバイス 2D-a08-13 座長 田中 雅光

低温デバイスのセッション後半では、6件の口頭発表があった。
2D-a08: 森林(電通大)らは、金ナノ粒子をサブµmオーダの電極間にランダムに配置して作製した単一電子帯電素子について、歩留まりや低温でのクーロン
閉塞の確認実験結果を報告した。
2D-a09: 樋口(電通大)らは、ジョセフソン接合を用いたディジタル-アナログ変換回路の要素回路である、DFQアンプの高周波での誤動作について詳細に数値
解析を行った。
2D-a10: 神谷(埼玉大)らは、光子数識別が可能な超伝導ナノワイヤ単一光子検出器の構成要素であるup/downカウンタを見直し、40 GHz動作が可能な回路
構成を検討した。
2D-a11: 荒木(横浜国大)らは、単一磁束量子回路による2入力ルックアップテーブルの設計と低速試験結果を報告した。今後は、高速化や小面積化が課題と
思われる。
2D-a12: 真田(横浜国大)らは、単一磁束量子回路による、非回復法に基づく整数除算器の性能を概算した。
2D-a13: 吉川(横浜国大)らは、断熱磁束量子パラメトロン回路によるレジスタファイルについて報告した。クロックスキューを低減化して高速化を試み、低速
測定での正常動作に成功している。超低消費エネルギープロセッサの実現に向けた研究進捗に期待する。




5月23日(火)
P会場 ポスターセッションII

バルク 2P-p01-03 座長 内藤 智之

「2P-p01:中西(芝浦工大)」Ag添加したGd-Ba-Cu-Oバルクの浸透成長法による作製条件の最適化を目的とした発表であった。バルク成長は等温過程によって行い、
それらの成長領域から等温成長における最適温度は986℃としたが、すべてのバルクで不均一核生成が生じており更なる成長条件の検討が必要であると思われる。
「2P-p02:赤坂(鉄道総研)」 磁気光学法によって大型の超伝導バルクの捕捉磁場分布を評価した。この方法はこれまで小片試料の自己磁場下での臨界電流密度
分布の観測に用いられることが多かった。今回、より大きなスケールのMgB2バルクにおいて同心円状の均一な捕捉磁場分布が観測できたことから、この方法がバルク
の捕捉磁場特性の評価に有用であることが示された。
「2P-p03:樋口(芝浦工大))」  カーボンコートしたB粉末を用いたMgB2バルクの超伝導特性についての発表であった。カーボンコートしたB粉末の使用は、臨界電流
密度を向上させることに加えて、バルクの均質化にも寄与することが示された。


HTSコイル 2P-p04-07 座長 大保 雅載

本セッションから筆者が聴講した発表について報告する。
2P-p04 只熊(九大):HTSコイルの内外に1対の消磁コイルを同軸配置して微小交流磁界を印加する方法を拡張してコイル励磁後の磁束クリープを抑制する検証
結果が報告された。8層、120.5ターンのHTSコイルを製作し 、その内外に銅コイルを同軸配置した。励磁後60 s経過して交流磁界を印加し、ホールセンサにより
軸方向磁界を測定して中心到達磁界3水準にて磁束クリープも抑制されることを検証したとの報告であった。
2P-p07 伊藤(東北大):核融合炉マグネットを想定し、大型導体に適用した場合の接合抵抗予測に関する報告があった。10 mm幅のGdBCO線材(フジクラ製)を
用いて挿入ブリッジ式機械的ラップジョイントを製作し、接合抵抗を液体窒素中で評価した。接合に熱処理を加えた場合、熱処理を加えない場合より接合抵抗率
を大きく低減出来ており、100 kA級導体(14層3列)に適用すると3分の1程度になると予測されるとの報告であった。


回転機(2) 2P-p08-13 座長 福井 聡


2P-p08 京大・アイシン精機のグループから、ALCAプロジェクトで開発中の高温超伝導誘導同期電動機に関して、回転軸の冷媒シール部分の熱伝導解析について
報告された。回転軸の径方向の温度分布はあまり無く、軸表面付近の計測により温度分布の予測が可能であるとの結果を報告した。
2P-p10 鹿児島大・九大・富士電機・ISTECのグループからは、全超伝導同期電動機について、低温ヨークと常温ヨークによる合計損失の比較を数値解析した結果
が報告された。低温ヨークによるHTS巻線の交流損失低減効果を合計損失の低減に反映するためには、ヨークの鉄損が十分に小さい否必要があることが示された。
2P-p11 鉄道総研・松井鋼材・三星工業・古河電工のグループからは、高温超伝導フライホイールのSMBの高耐荷重化に関する基礎研究が報告された。
2P-p12 鉄道総研・松井鋼材・古河電工のグループから、SMBの大荷重化にむけてコイル部の冷却と低発熱化の両立を目的とした、熱伝導に優れる銅線をポリエステル
繊維でスダレ織りした部材をコイル巻線部の側面板に用いる構成のHTSコイルの試作結果が報告された。
2P-p13 東大・JAXAのグループから、宇宙マイクロ波背景放射偏光観測実験のための偏光変調器で用いることを想定した超電導磁気軸受の損失特性・ばね特性に
ついて数値解析により評価結果を示し、偏光変調器への適用性について報告を行った。


マグネット技術・評価(1) 2P-p14-19 座長 花井 哲

本セッションでは、REBCO導体のコイル化における課題とその対策等に関して解析的評価を行った6件の発表があった。
2P-p14:沖(九大)らは、2本並列転位導体でソレノイドコイルを巻線したときに発生する付加的交流損失と磁場振幅の関係等を検討し、磁場振幅が大きくなると
偏流が臨界電流に近づき、損失が急激に大きくなる点が存在すること等を示した。
2P-p15:吉田(東北大)らは、REBCO超電導コイルの巻枠材料によって、超電導層に生じる劈開力がどのように変化するかを示した。
2P-p16:馬渡(産総研)らは、超電導の磁化を簡易に近似することで、テープ線材を巻線した超電導コイルに発生する遮蔽電流磁場を簡易に算出する手法を紹介した。
2P-p17:伊東(早大)らは、REBCO超電導コイルを用いたMRIコイルシステムにおいて、コイルの配置と形状をフィードバックしながら遮蔽電流による不整磁場を
評価、改善する手法を紹介した。
2P-p18:佐川(九大)らは、パンケーキ間転位を施した3本並列導体によるコイルの周波数特性を計算し、周波数が大きくなるにつれ、コイル電流が均流化してい
くこと等を紹介した。
2P-p19:柿本(早大)らは、無絶縁コイル内部の1/3、2/3の位置にターン間接続箇所を設けて通電を行うシミュレーションを行い、接続部があっても無絶縁コイル
では、問題なく通電できることを示した。






5月24日(水)
A会場

送電ケーブル(2) 3A-a01-05 座長 浜辺 誠

送電ケーブル(2)のセッションでは、交流2件、直流3件のHTSケーブルの発表があった。
「3A-a01:高木(古河電工)」らはAC275kVケーブルの地絡事故対策として、一端を封じた1 mのケーブルを使った地絡模擬試験を行い、真空断熱管に保護層を導入
することで深刻な配管破壊が防げることを示した。
「3A-a02:堀田(早大)」らはAC66kV系統で想定される31.5 kA-2 sの短絡事故を模擬する実験を3 mケーブルで行うとともに液体窒素の挙動解析との比較を行い、
結果の差異の要因として冷媒の気化、再凝縮の考慮が解析に必要との見解を示した。
「3A-a03:山口(中部大)」「3A-a04:筑本(中部大)」「3A-a05:渡邉(中部大)」らはすべて石狩プロジェクトDC1000 mシステムに関する報告であった。
筑本らの発表では、ケーブルの熱応力対策として室温でケーブルコアがヘリカル形状になるように1000 mケーブルコアの構造を設計・施工し、実際に許容張力以下
に抑えられたことを報告した。山口、渡邉らからは、同システムの熱侵入量等の測定結果、および熱侵入の要素解析を試みた結果について報告があり、今後の
データの蓄積が必要とのことであった。




5月24日(水)
B会場

Y系線材諸特性 3B-a01-07 座長 柁川 一弘

B-a01:東川(九大)らは、リール式走査型ホール素子顕微鏡(RTR-SHPM)を用いて観測した4 mm幅4分割のマルチフィラメント線材の臨界電流分布に基づいて、
フィラメント間抵抗を考慮した分布定数回路解析により、線材全体のマクロな臨界電流を評価した。
3B-a02:辻野(九大)らは、RTR-SHPMを用いて観測した5 mm幅のGdBCO線材の残留磁界分布から局所臨界電流分布を求める3通りの解析手法を比較し、実験結果の
再現には2次元分布を考慮する必要があることがわかった。
3B-a03:野田(九大)らは、サブクール液体窒素循環システムを組み合わせたRTR-SHPMを用いて5 mm幅のGdBCO線材の局所臨界電流分布を評価し、その空間分布に
外部磁界依存性や温度依存性がほとんどないことがわかった。
3B-a04:西宮(九大)らは、RTR-SHPMとX線マイクロCTを用いて2 mm幅のRoebel導体素線における局所欠陥をハイブリッド観測し、特性不良箇所の検出や加工
プロセスへの効果的なフィードバックに成功した。
3B-a05:井上(東北大)らは、非接触給電システムへの高温超電導コイルの適用を目指して、GdBCO線材を巻線した2つの試料コイルのkHz帯における交流損失特性
を液体窒素浸漬冷却下で実験的に評価した。
3B-a06:平山(鹿児島大)らは、Bi-2223線材の2枚積層導体で巻線された高温超電導コイルを対象に、正弦波形や方形波形の外部交流磁界を印加した際の交流損失
を液体窒素蒸発法により測定した。
3B-a07:泊瀬川(東北大)らは、電流輸送用の希土類系高温超電導線材とクエンチ検出用のNbTi低温超電導線材を組み合わせたハイブリッド線材を対象に、
クエンチ検出性能向上の可能性を熱伝導と静電ポテンシャルの連成解析により検証した。


Y系バルク 3B-p01-04 座長 森田 充

3B-p01:下山(青学大)らは、Y系247を中心に各種RE系焼結体の合成に関して報告し、Y247は、Y123とCuOから高酸素分圧下の焼成で反応が速やかに進行する
こと、また、Y123に対しY247は、優れた磁化特性を示すことから高いポテンシャルを有するとの報告があった。
3B-p02:松丸(青学大)らは、Ba過剰仕込組成で作製したGd系溶融凝固バルク材料に関し報告し、ピン二ング力密度が過剰仕込み量に関し依存性を有し、過剰
仕込み量ゼロに対し最大1.5倍の向上を確認したと報告。Ba過剰にすることでRE/Ba固溶が抑制されたためと考察した。
3B-p03:高橋(岩手大)らは、Y123にY211およびGd211(またはDy211)を混合し、結晶成長させた溶融凝固バルクの微細組織観察結果および捕捉磁束磁場特性
に関し報告。123相中の211粒子のYとGd(またはDy)との分布をコントラストの明確な反射電子像を用いメカニズム等に関し議論した。
3B-p04:井上(芝浦工大)らは、ナノダイヤモンド(ND)を添加したY系バルクの微細組織およびJc-B特性に関して報告。ND由来と思われる粒子が分散したSEM像
を示した。このような粒子はカーボンナノチューブを添加した場合にも見られるとのことであり、粒子組成の同定が望まれる。




5月24日(水)
C会場

磁気分離 3C-a01-08 座長 植田 浩史

3C-a01 渡辺(宇都宮大):本発表は、磁気活性汚泥法の実用磁気分離装置を試作し、性能評価した結果と大規模処理のための超電導磁気分離ユニットの必要性
について報告されたものである。質疑では、超電導化による経済性(ランニングコスト)、吸着効率について議論があった。超電導マグネットは、磁場を大きな
空間で利用できるため、吸着面積が大きくとれ、装置の台数が減らせるが、コストについては今後検討するとのことであった。
3CA-a02 酒井(宇都宮大): 本発表は、活性汚泥から排出される温室効果ガスの削減について検討し、超電導磁気分離の可能性について報告されたものである。
超電導磁気分離は大規模水処理では優位になるとされるが、2000 m3/dの分離ユニットで汚泥剥離速度400 m3/dl以上の性能が必要で、装置のコストは10倍以下が
望ましいとのことであった。
3C-a03 佐藤(宇都宮大):本発表は、磁化活性汚泥法の処理安定性を検証するため、人工的なショックロード試験を行った結果を報告したものである。試験
期間中は分離トラブルがなく、負荷が戻ると1日程度で自動復帰した。磁気分離を利用した磁化活性汚泥法の処理安定性が示された。
3C-a04 武藤(宇都宮大):本発表は、小規模工場排水に磁化活性汚泥法を適用した結果を報告したものである。磁化活性汚泥法は、運転維持管理や容易で、
設置面積やコスト面で従来の活性汚泥法よりも優位であることが示された。
3C-a05 伊藤(阪大):本発表は、廃家電の破砕物に含まれる非鉄金属を、磁気アルキメデス法で選別することの可能性を検討したものである。質疑では、
選別後の回収や実際の破砕物に付着している不純物について質問があり、今後の検討課題になるとのことであった。
3C-a06 平松(阪大):本発表は、JST-ALCAの助成を受けた研究で、火力発電所の発電効率低下の原因となる配管に付着する酸化鉄スケールを磁気分離によって
除去することを検討したものである。今回は、スケールの成分と温度の溶存酸素濃度への依存性を検証した。質疑では、実験に用いた圧力容器が実際のパイプの
実環境を再現しているのか、指摘があった。今後は、実環境を再現した実験を検討するとのことであった。
3C-a07 山本(阪大):本発表は、JST-ALCAの助成を受けた研究で、火力発電所の配管に付着する酸化鉄スケールを磁気分離で用いるフィルターシステムの設計
について報告したものである。マグネタイトの分離率向上とフィルターの閉塞緩和が課題である。
3C-a08 岡(新潟大):本発表は、Niメッキ溶液からNi化合物をHTSバルク磁石を用いた磁気分離でリサイクルしようとする試みを報告したものである。従来は
非効率であった回収工程お現実的な生産工程とするめどがついたとのことである。


送電ケーブル(3)/電力機器 3C-p01-05 座長 小川 純

5件の発表のうち最初の1件がキャンセルとなり、4件の発表が行われた。4件のうちケーブル1件、限流器2件、非接触給電1件に関する研究発表が行われた。
3C-p02:木内(九州工業大学)らの研究で、RE系超伝導直流ケーブルの臨界電流特性を向上させるために縦磁界を積極的に活用する方法を提案した。
3C-p03:高谷(京都大学)らの研究で、超伝導限流器のためのGdBCOテープ線の復帰特性向上させるための冷却フィンの高さの影響についてハイスピードカメラ
を用いて沸騰現象を観察した結果を報告した。
3C-p04:東川(九州大学)らの研究で、超伝導限流器の限流動作をモデル化し、リアルタイムデジタルシミュレータを用い、直流き電系統を対象とした動作
シミュレーション結果について報告をした。
3C-p05:宮城(東北大学)らの研究で、非接触給電システムにおいて高温超伝導コイルを使用した場合の伝達効率に関する基礎的な検討について報告した。


マグネット技術・評価(2) 3C-p06-08 座長 岩井 貞憲

本セッションでは、REBCO高温超電導線材を用いたコイルの数値解析、および評価に関連する3件の発表があった。
3C-p06:曽我部(京大・日本学術振興会特別研究員DC)回転ガントリーを想定したコサインシータ型の3次元形状コイルを対象とした交流損失の解析結果について
報告があった。鉄ヨークの影響をコイル通電電流の影像電流によって近似し、計算コストを低減している。コイル断面の中央面付近において線材テープ面垂直方向
の磁場成分が大きく、発熱密度が相対的に高くなる傾向が示された。
3C-p07:藤田(フジクラ)REBCO線材の剥離強度の評価方法の1つとして、内外径比の異なる複数のエポキシ樹脂含浸コイルを試作し、劣化の有無から剥離強度を
統計的に評価した結果が報告された。ワイブル解析により平均的な剥離強度とばらつきを定量化しており、2013年製造の線材と2016年製造の線材で、平均的な剥離
強度が改善したことが示された。ただし、ばらつきについては、ほぼ同じ値であり、今後、改善を目指すとのこと。
3C-p08:武藤(フジクラ)REBCO線材のテープ面垂直方向(剥離方向)の疲労特性について、セラミックスと同様の挙動を示すか調査した結果が報告された。線材
テープ面をスタッドピンと矩形アンビルで接着し、クリープ試験機による静疲労試験と、引張り試験機による動疲労試験を実施したとのこと。静疲労試験で算出した
疲労係数は、セラミックスと同程度であること、また動疲労試験では高速条件ほど破断強度が高くなる傾向が得られており、理論と矛盾しない結果となっている。


安定性・保護 3C-p09-12 座長 宮崎 寛史

「3C-p09:大久保(上智大)」MgB2コイルの熱的安定性についてW&Rのコイルを試作し、コイルに取り付けたヒータにより常伝導伝搬特性を評価した
結果について報告した。最終的には短周期の変動を抑制するためのSMES応用を目指しており、まずはMgB2のコイルを試作して諸特性の評価を進める
とのことであった。
「3C-p10:末富(千葉大)」Bi2223NX線材およびREBCO線材のそれぞれに折れによる劣化箇所を与えたコイルを試作し、液体窒素中にて熱暴走試験を実施した結果
について報告した。Bi2223NX線材を使用した場合が熱暴走電流の低下が少なく有利であるとの結論であったが、劣化の程度が同じになっているかどうか、Agと
銅の安定化層の違いを評価していることになっているのでは、との質問があった。
「3C-p11:小島(上智大)」HTSコイルの部分的な欠陥を模擬した解析モデルを用いて、コイル運転が継続できる欠陥の大きさの検討結果を報告した。劣化部の長さ、
大きさおよび温度などをパラメータとした試験を実施し、クエンチ保護条件についての検討も進めている。
「3C-p12:市川(早大)」無絶縁構成のREBCOパンケーキにおいて、層間抵抗をコントロールするために、層間に挿入する金属テープの枚数、種類を変えた場合の
層間抵抗測定結果について報告した。層間抵抗は金属テープの抵抗率ではなく接触抵抗で決まっており、枚数を増やすことで接触回数が増え、結果的に層間抵抗
を大きくできるとのことである。コイルサイズや使用する材料などが変わっても抵抗値を自由に設定できる技術開発を期待するというコメントがあった。




5月24日(水)
D会場

核融合 3D-a01-04 座長 辺見 努

核融合のセッションでは、原型炉活動、放射線照射後の線材特性試験装置、JT-60SAに関する4件の発表があった。
3D-a01 西村(NIFS)らから、ITERの遅れに対応した原型炉活動としてのAction Planの改訂状況について報告が行われた。原型炉を建設するために必要なAction
項目について議論されており、改訂されたAction Planに基づいて、超伝導コイルの設計及びR&Dが進められるとのことであった。
3D-a02 西村(NIFS)らから、放射線照射後の超電導線材の特性試験装置の状況について報告が行われた。サンプルの熱的接触を改善することで、電磁力が加わって
も極低温で安定して試験を実施できることが示された。本装置は照射後の線材特性を評価できる貴重な装置であり、今後のデータ取得が期待される。
3D-a03 村上(量研機構)らから、JT-60SAの超電導コイルの製作状況について報告が行われた。タイプレートによるCSの予荷重の印加方法について説明され、
予荷重を加える際に歪ゲージ等でCSの複合構造の剛性を測定してはどうかという提案など議論が行われた。取得されれば、大型コイルにおける貴重なデータと
なることが期待される。
3D-a04 村上(量研機構)らから、JT-60SAのCSの冷却試験結果について報告が行われた。実機CS1の冷却試験の結果から、冷え残り等がなく想定される期間で
冷却できることが示された。本成果はJT-60SAの超電導コイルシステムにおいて重要なマイルストーンの一つが達成されたことを示している。


構造材料 3D-a05-06 座長 熊谷 進

「3D-a05:神田(中部大)」航空機用超電導ケーブルの断熱2重管への適用が期待される比重の小さいMg-Li合金を対象に、液体窒素温度および室温におけるシャルピー
衝撃試験結果が報告された。圧延の影響を受けた異方性を示す結果であったが、室温では100±30 kJ/m2、77 Kでは113±32 kJ/m2と低温脆性は示さない結果が得ら
れている。
「3D-a06:鬼頭(大阪大)」エポキシ樹脂とガラスクロスからなるGFRPとGFRP/ポリイミドハイブリッド複合材料を対象に沿層方向の絶縁性能に及ぼすγ線照射の影響
が報告された。GFRPのみの場合で絶縁破壊電圧(絶縁耐力)は増加を示したが、一方のハイブリッド複合材料では低下が見られ、貫層方向の絶縁耐力向上を図る
ためのハイブリッドシステムに関してさらなる研究が必要であることを示している。


Bi系・鉄系線材 3D-p01-05 座長 井上 昌睦

3D-p01: 岡田(住友電工)らは、高強度型のBi2223線材Type HT-NXの接続技術開発の近況について報告した。線材の片面の補強材を剥ぎ取り、銀シースの露出面同士
を向かい合うようにスプライスする手法を進めており、スプライス部中央にCuテープを介在させることにより、引張り強度389 MPa、接続抵抗73 nΩを達成している。
引張り応力に対する疲労試験では、105回までのIcの低下率が接合の無い単線と同程度であることが報告された。
3D-p02: 長村(応用科学研)らは、BSCCO線材およびREBCO線材の臨界電流の可逆応力・歪限界の評価手法についての検討を報告した。一般的には、臨界電流の応力・
歪特性は応力印加前の臨界電流Ic0を基準に臨界電流Icの減少率(Ic/Ic0)を議論するが、これを、応力印加後にゼロ応力に戻した際に得られる臨界電流Icrを用いて
得られる減少率(Icr/Ic0)で表現する手法を提案した。この手法により、BSCCO線材、REBCO線材ともに、不可逆領域を明確に捉えることができるとのことである。
3D-p03: 武田(東大)らは、低酸素分圧下焼成によるBi2223厚膜の作製について報告した。Bi2212を主相とする粉末とBi2212の混晶粉末の混合比を系統的に変えた
ところ、混晶粉末が若干含まれている方が高い粒間Jcが得られていた。空隙はまだ存在しているとのことであったが、Jcは5.8 kA/cm2を達成している。今後は、
加圧焼成や元素置換を取り入れて10 kA/cm2を目指すとのことである。
3D-p04: 戸叶(NIMS)らは、PIT法により作製した(Ba,K)Fe2As2テープ線材の臨界電流特性について報告した。SUSとの二重被膜構造とすることにより、ロール圧延後
にプレスを加えずそのまま熱処理を施しただけでも十分に高いJcが得られるとのことである。SUS/Ag-Sn/Ba-122線材ではAg-SnとBa-122との界面が平滑化することも
あり、4.2 K、10 Tで105A/cm2程度のJcが得られていた。
3D-p05: 徳田(農工大)らは、高エネルギー混合法によるBa(Fe,Co)2As2多結晶体の作製について報告した。遊星型ボールミルでの粉砕・混合時のエネルギーEBMを
40 kJ/kgから183 MJ/kgまで変化させたところ、41 MJ/kg以上でBa122の単相が得られ始めたとのことである。長時間焼成等との組み合わせにより22 Kを超えるTcに、
8x103 A/cm2を越えるJc @5 Kが得られるに至っているとのことである。